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京都大学 交換留学体験記 ①留学準備編 ~南洋理工大学 in シンガポール~
インタビュー・レポ
こんにちは!京大map運営チームの工学部のペンギンです!
前回は、京都大学の交換留学制度を利用してシンガポールの南洋理工大学に留学した私が、留学準備に必要なことについて解説しました。

京都大学 交換留学体験記 ①留学準備編 ~南洋理工大学 in シンガポール~
こんにちは!京大map運営チームの工学部のペンギンです。 今回は、京都大学の交換留学制度を利用してシンガポールの南洋理工大学(Nanyang Technological University)に留学し…
皆さんの中には、留学に興味はあるものの、「現地での生活が不安」「学びのイメージがつかめない」という方も多いと思います。
今回は、京大生で交換留学に興味を持っている皆さんに、私が留学中の授業や生活を通じて得た気づきや、異文化の中で感じたことをまとめました。少しでも、実際の体験を知ってもらい、挑戦の後押しになれば嬉しく思います。
私の専門は工学のため、もちろん理科系の授業は履修しましたが、それ以外にも学びたいことを自由に履修しようと考えて、アントレプレナーシップ、プレゼンテーションスキル、社会科学、言語など興味を惹かれた文科系の科目も合わせて履修しました。
ちなみに、シンガポールでは、英語が公用語の一つのため、私が履修した授業はすべて英語で行われました。ただ、中国関連の専攻分野の授業に限り、中国語で行われている授業も一部存在するようです。
理科系の科目に関しては、クラスルームの雰囲気や、授業形式、難易度ともに、京都大学での授業と、違いがほとんどありませんでした。また、理科系の内容は、数式さえ追うことができれば内容をある程度理解できるため、そこまで高い英語力は必要なく、すぐに慣れることができました。

工学部の学部棟
一方で、文科系の科目に関しては慣れるのに時間がかかりました。授業では、グループワーク、クラスディスカッション、プレゼンテーションが課され、他の学生の熱量や、議論のスピード、発言の積極性に圧倒されることが多かったです。
例えば、あるグループ発表のための準備では、数日連続で深夜を回っても議論を続け、発表の準備がすべて終わる頃には、朝になっていたこともありました。そのようなシンガポールの学生の一つの課題に向き合う真剣さは、留学生活の中で印象的だったことの一つです。。ちなみに、シンガポールでは、「Kiasu」というユニークな表現があり、過度に競争心が強い人や、他人と比較して何かを失うことを必要以上に恐れる人のことを指すそうです。たった一つの授業のグループワークに、そこまで時間と努力をかけて本気で取り組む人々は、まさに「Kiasu」であり、激しい競争社会であるシンガポールらしいと感じました。また、授業中の発言に関しても、発言できたか否かで加点される仕組みの授業もあり、「Kiasu」の競争心が刺激される場面だと感じました。私も、そのような雰囲気に刺激を受け、毎回の授業で少なくとも一回発言するというルールを自分に課していました。

キャンパスで最も幻想的な空間、ラーニングハブにて(愛称:小籠包)
留学中は大学の学生寮で生活しました。留学生のルームメートとの2人部屋であり、トイレ、シャワールーム含めすべて共用でしたが、特に問題はありませんでした。むしろ、毎日の会話や食事を共にすることを通じて、留学の終盤には一緒に旅行をしたり、留学後にはお互いの国を訪れたりするくらい、非常に親睦が深まりました。
留学の際に、友人ができるかを心配する方もいると思いますが、実際はそれほど心配する必要はありません。なぜなら、大学による留学生向けのサポートが非常に手厚いからです。例えば、Buddy Systemやキャンパスツアーなど、現地の学生や他の留学生と自然に交流できる大学主催のイベントが定期的に開催されています。また、大学全体や、学生寮ごとのSociety(日本の大学におけるサークル)が多数あり、興味のある活動に参加するだけで、自然と人と関わる機会が生まれます。さらに、特に交換留学生は、限られた期間を最大限楽しもうという姿勢を持った人が多いため、仲良くなれば、様々な場所に一緒に巡ったりと充実した時間を過ごせるはずです。
シンガポールでは、薬物や犯罪に対して非常に厳しく取り締まりがされているため、他の留学先と比較して、治安や他の留学生とのトラブルなどの不安が限りなく小さかったです。そのため、安心して留学ができる国としておすすめです。
また、シンガポールは都会ではありますが、自然が残っていることも魅力の一つです。例えば、私の住む学生寮は豊かな動植物に囲まれており、近所の寮では部屋の中にサルが侵入するというハプニングもありました。また、昆虫も多く生息しており、建物や寮の部屋の中でよく見かけました。

ワニと間違えるほど大きいトカゲ @寮の池にて

日向ぼっこするサルの親子 @寮の食堂付近にて
学期ごとの長期休暇のほかに、大学の授業期間の中間に存在するリセスウィークが1週間、そして、期末試験の準備期間としても1週間休みがあります。それらの授業期間は、授業内容を振り返る期間として設けられている期間ですが、その休暇を利用して、旅行に出かける人も多くいます。私自身も、授業の復習をほどほどにこなしながら、 仲良くなった交換留学生の友人らと、シンガポールの周辺び東南アジア各国を訪れました。特に、各地のナイトマーケットは熱気が溢れており、個人的にはその雰囲気がとても気に入りました。

「最後の秘境」といわれるフィリピン・パラワン島でのバイクタクシーからの眺め
留学生活で通じて強く感じたのは、「相手の文化を理解しようとする姿勢」こそが、信頼関係の出発点だということです。
シンガポールでは、文化や慣習、初対面の人とのコミュニケーションの仕方、友人との付き合い方、オンラインでのコミュニケーションの仕方に至るまで、日本とは異なる点が数多くありました。例えば、言語に関しても、基本的に日本で学んできた英語でも、シンガポールに特有のユーモアや、表現方法、ジェスチャーなども存在します。
こうした違いに、最初は戸惑うこともありましたが、一度立ち止まって違いを観察し、母語や宗教行事、食習慣について、素直に質問してみると、想像以上に会話が広がることに気が付きました。 このように、違う部分に丁寧に目を向け、相手の背景を理解し、柔軟に受け入れる姿勢を持ったことで、現地の学生と自然に打ち解けることができたのだと思います。
シンガポールで生活した経験は、「自分にとっての当たり前が、他の人にとっても当たり前とは限らない」ということを強く感じるきっかけになりました。
現地では、文化も言葉も違う「外国人」=「少数派」として暮らすことになり、日本にいたときには多数派として知らないうちに社会から守られていたことに、初めて意識が向きました。現地での経験を通して、これまで当たり前だと思っていた価値観や習慣を相対化して見ることができるようになりました。また、それにより、自分とは背景の異なる「他者」に対しても、より想像力を働かせられるようになったという点において、自分の視野が少し広がったように思います。

アート専攻の学部棟 美しいデザイン
私自身を振り返ってみると、留学前に「自分が何を学びたいのか」を行動レベルまで落とし込んでおけばよかったと思います。 学びたいことが曖昧なままだと、留学中は想像以上に早く毎日が過ぎてしまうと感じました。私は、シンガポールが非常に様々な国から外国人労働者を受け入れていることに注目して、多民族社会で生じる社会的な摩擦やすれ違いを、「社会の中にどう受け入れられているか(社会的包摂)」という観点から観察したいと計画を立てていました。しかし、そのための具体的な行動目標を立てられていなかったために、必要な行動を十分に起こせなかったと感じています。
また、シンガポールでは、交換留学生の労働や報酬を伴う活動(アルバイト、インターンなど)が禁止されていたため、現地で可能な社会体験が限られていたことは残念でした。 もし、そのような活動が許されている国に留学する場合には、学業の範囲内で現地社会に関わる活動に挑戦することをおすすめします。 実社会を体験することで、学問と社会を結びつけて考える視野が広がるはずです。

外国人労働者が暮らすプレハブ寮 職種は建設業、介護業、家事労働など様々
交換留学は、1〜2学期間を、海外の大学で「留学生」として過ごす制度であり、同時に自分自身をを見つめ直す貴重な機会でもあると感じました。
自分が留学できたのは、決して自分の力だけではありません。担当教職員の方々、協定大学のスタッフの方、友人や家族の支えがあってこそです。実際に準備を進めていく中で、その支えの大きさに気づき、感謝の気持ちが一層深まりました。 留学を終えた今振り返ってみると、多くの方に支えられて歩んだ、学びの旅だったと感じています。
もしこの記事を読んで「いつか自分も」と思った方がいれば、ぜひ一歩を踏み出してみてください!異なる文化の中で学び、出会い、感じるすべての経験が、きっとあなたの将来を形づくる大切な糧になると思います。
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京大mapの記事をお読みいただきありがとうございました。