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【理系の学部就職】就職して感じた理系でよかった点とは?【理Ⅰ→マテ工】

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今回は、理科Ⅰ類から工学部マテリアル工学科バイオマテリアルコースに進学し、学部卒で株式会社リクルートに入社した遠藤あゆみさんのインタビュをお届けします。

──まず、学部選択についてお聞きします。理科Ⅰ類に入った理由を教えてください。

理系科目が得意だったため理系を選び、将来的に理工系の学部に進みたかったため理科 一類に入りました。将来像として、やんわりと理系科目の教師になりたいというのはありましたが、当時はキャリアから逆算して科類を選んだというよりは得意・興味分野で選びました。

──それでは、工学部マテリアル工学科に進学した理由を教えてください。

進学選択の時は、将来高校教師になることをベースに考えており、工学部か教育学部で悩んでいましたが、高校で学ぶ内容が大学での学びや研究にどのように繋がっていくのかを具体的に伝えられる人で在りたいと考え、より専門性を高められる工学部を選択しました。工学部の中では、システム創成学科や電子情報工学科等の情報系も検討しましたが、実験系により興味があったため、学生実験が充実しているマテリアル工学科を選びました。また、教職を取るためにコマ数に余裕のある学科に進む必要もあったというのも選んだ理由の一つです。

──なるほど。工学部マテリアル工学科はバイオマテリアルコース・ナノマテリアルコース・環境基盤マテリアルコースの3つに分かれていると思うのですが、どのコースに進まれたのですか?

ヘルスケアやバイオ系の研究に興味があったので、バイオマテリアルコースを選びました。2年終了時にコース選択を行い、3年前期は全コースの授業から広く受講し、後期に研究室配属を見据えた専門的な授業を受けました 。

──工学部マテリアル工学科はどのような学科なのでしょうか?

研究テーマが多岐に渡るので説明が難しいですね(笑)。高分子や金属、半導体デバイスなど、様々な材料について学べる学科と言えばいいのでしょうか。

バイオマテリアルコースに絞って言うと、名前の通り生体内に使われる材料の研究が盛んで、日常的に使うコンタクトレンズから医療分野における注射器や人工臓器まで対象は幅広いです。薬剤カプセルやドラッグデリバリーシステム(薬を必要最低限の量、必要な時間に必要な場所へ狙い通りに届ける技術)の研究も行います。

──面白そうですね! 就職先はどのような系統が多いか伺いたいです。

医療用品・製薬会社や化学関連のメーカーが多いのですが、マテリアル工学科全体で言うと自動車メーカーや鉄鋼会社、ニッチな所では 宇宙開発系の会社まで、就職先もとても幅広いのが特徴です。肌感では95%ほどは院進で、学部卒も数人いたのですが、研究職というより文系就職が多かった印象です。

【理系学部卒】理系で院に進まないという選択「いきいきと働ける場所を探して」~遠藤さんインタビューvol.2~

──次に、就職という選択について詳しく伺いたいです。9割以上も大学院に進むということでしたが、最初は遠藤さんも大学院に行く前提で学部を選ばれたのですか?

そうですね、元々は大学院まで行き研究室での研究を進めながら、教職を取って教員になろうと思っていました。

──なるほど。どのような心変わりがあって就職という決断をされたのでしょうか?

3年生の頃、学部卒業後の進路について漠然とした不安がありました。講義や実験の日々の中で、孤独な戦いという印象のある研究生活を続けるよりも、人と協働して何かを取り組む方が自分の性分に合っているのではないかと感じていたのです。

3年生の夏頃には周りに流されず学部で卒業し就職するという選択肢を取っても良いのではないかと考えるようになり、院進以外の選択肢を作っておくためにも、3年生の 秋頃から就活を始めることにしました。卒業生訪問や短期インターンを通して情報収集する中で、社会に出る方が自分に合っていると確信し、学部就職を決めました。

──普通と違う決断をするというのはかなり勇気のいることだったと思うのですがどうだったのでしょうか。東大生はかなり周囲に流されがちだと思うのですが……

確かに(笑)。ただ、情報収集と自己分析を重ねたうえで納得感を持って決断をしたので迷いや不安はなかったですね。自 分の場合は、学費を払って研究する2年間と、給料をもらって仕事をする2年間を比較した時に後者を取りたいと思いました。

──特に理系は学部でやっていたことを将来もやり続けるというイメージがある人も多いと思うのですが、理系で文系就職をするにあたって気になることはありましたか?

自分の場合は特になかったです。確かに理系職に就くなら学部時代に学んだ分野が直結することが多いです。一方、課題解決を前提とするビジネスにおいては、理系職であっても文系職であっても、対象へのアプローチ方法、いわゆる「仮説思考」(現状整理~課題の仮説設定~仮説の検証・修正~立証までのプロセス)が重要だと思っており、特に理系学生はこの思考法が学部時代でも鍛えられると思います。 私自身、学部で学んだこの思考法が今実際にビジネスの現場で活きているので、学部での勉強が無駄だった・初めから文系の学部を選べばよかった などとは感じていません。

──それでは実際の会社選びという話に入っていきたいと思います。どのような軸で今の会社に入ったのか教えていただけますか?

前提として、幅広く業界見ながら色々な人に会って情報収集と自己分析を繰り返し最終的に残った選社軸なのですが、主に3つあります。

1つ目は『自分がいきいきと働けるか』という軸です。自分の場合は、「何をやるか」より「どのような環境で・誰と働くか」という要素を重要視していました。

2つ目の軸として、『世の中へのインパクトがある会社であるか・事業が社会への貢献に結びついているか』を重視しました。

そして3つ目の軸は『広い視野とスピード感を持って、若いうちから様々な経験を積めるか』です。もともとは学校教育に携わりたいと思って教員を目指していたものの、就活を進める中で、「今まで身近なものであったから教育に興味や課題意識をもっているだけではないか」と考えるようになりました。そこで、最初は学校教育に閉じず、 一度広い視野で、社会でどのようなことが出来るのか・ビジネスはどのように成り立っているのかをスピード感を持って知ることができるところを探しました。これらの3本の軸に合致したのが、今のリクルートという会社でした。

──なるほど。業種というより会社で選んだということですか?

そうですね。1つ目の軸である『自分がいきいきと働けるか』に繋がるのですが、「年功序列などに縛られず正当に評価されるか」、「風通しが良いか」といった“企業風土”の面と、「周りに優秀な人が揃っていて良い刺激を受けられるか」といった“人”の面の両方が揃っているかを重視しました。共にネット上の情報だけでは実態が分かりきらないと思ったので、就活時は実際に気になる会社の人と会って話を聞くことを大切にしていました。多い時期は毎日2、3件卒業生訪問していたと思います 。

就活期は「あなたのやりたいことは何ですか」という問いを何度もぶつけられますが、就活期の短い期間で「仕事を通してやりたいことはこれだ!」と明確に見つけられる人ってそんなに多くないと思うんです。いくら自己分析を重ねて探しても見つからないときもあります。なので、「何をやりたいか」という軸に縛られすぎず、「どう働きたいか」、「誰と働きたいか」という軸があってもいいのではないかなと思っています。

【理系の学部就職】就職して感じた理系で良かった点とは?~遠藤さんインタビューvol.3~

──それでは、リクルートで今までどのようなことをされてきましたか?

最初はホットペッパービューというサービスの営業職で、広告掲載の新規開拓営業や、掲載クライアントの売上拡大を図るコンサル営業をしていました。

特に新規開拓営業はなかなか泥臭い仕事も多かったですが、この会社は成果をあげたうえで自らが手を挙げればきちんと機会を与えてくれるので、営業現場でもきちんと成果を残すよう努力しました。そして1年程経ったタイミングで「企画職に異動し、会社の内側から事業の仕組みを動かす経験がしたい」という旨を当時の上司や人事部に伝え、同サービスの経営企画のような部署に配属となりました。現在は同部署で営業戦略の策定や事業の予算管理、中長期の事業PL(損益計算書)の策定などを行っています。

──入ってみてから会社に対するイメージの変化はありましたか?

実は自分の抱いていた印象とあまりギャップがないんです。特に“人”の面では、上司の意思決定や判断は合理的ですし、多くの人が目的意識を持って志高く働いていたり、人情が厚く面倒見がよかったりと非常に居心地が良い会社だなと感じています 。例えば、営業で中々成果があげられず悩んでいた時、当時の上司が部署の垣根を超えて同じような悩みを抱えていた先輩と話をする機会を作ってくださり、自身や自組織の営業成績には全く関係ないにもかかわらず親身に相談に乗り的確なアドバイスを頂けたことがあったなど、会社の方々の優しさに救われることが多々あります。

──なるほど。いわゆる理系の文系就職だと思うのですが、入社してみて理系で良かったと感じることはありますか?

まず、数理能力や論理的思考力は活きると思います。加えて、企画職はデータの分析が多いので分析の過程で、学部で培った実験的思考や仮説思考がプラスに働いていますね。あとはパワーポイントでの資料作成やExcelでの計算に慣れているのも隠れたアドバンテージです。

──では、もし今学生に戻れるなら何をしたいと思いますか?

所属している学部のみに捉われず、自分の興味ある分野の勉強や活動には積極的に挑戦したいです。当時マテリアル工学科に所属していましたが、サークルの先輩に紹介されて、教育学部と市の教育団体が主催の地域密着型ものづくりワークショップに参加したのは良い経験でした。社会人になるとお金の余裕ができても時間の余裕があまりないので、学生のうちに興味のあることはとことん挑戦できるとよかったなと思います。

──今後のキャリアについてどうしていきたいと考えているのかもお聞きしたいです。

まだ暫くは今の会社で事業拡大に携わる業務を経験しながらスキルアップする予定ですが、数年以内には教育業界にキャリアシフトをしようと考えています。

──最後に、学生へのアドバイスがあればお願いします。

1つは、早い段階から自己理解をする習慣をつけると良いと思います。多くの人は、就活期になって初めて自己分析を始めると思いますが、短い期間に行った浅い自己分析で自己理解を完結しファーストキャリアを決めてしまうことはもったいないと思うんです。 実際に、私の友人にも自己理解が不十分だったために社会に出て自分の想像と違ったと苦しんでいる人もいます。なので、大学1,2年のうちから自己理解を深めて悔いのない選択をしていってほしいなと思います。

もう1つは人との繋がりを広く持つことをおすすめします。私はサークルで仲良くなった友人や、同じクラスの友人、インターン先で出会った就活仲間とは今でもやり取りをしています。大学の友人は利害関係もなく、仕事の話も私生活の話も気兼ねなく話せる貴重な相手だと思います。

どちらも自分の人生の幸福度を上げることに繋がるので是非大事にしてほしいです。

──本日はお時間いただきありがとうございました!

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