長期インターン
【文Ⅲ→農学部】東大卒の女性農家としてのキャリア
インタビュー・レポ
今回は、文科Ⅰ類から法学部に進学した後、事業立ち上げや留学を経験し、新卒でVC(ベンチャーキャピタル)のジャフコ グループ株式会社に入社された、 白川亜祐旭さんのインタビューをお届けします。
──白川さんは、どうして文科Ⅰ類を受験されたのですか?
私は幼い頃からぼんやりと世の中のためになるような仕事をしたいと思っていました。高校生だった当時は、メインで世の中を動かしているのは政治なのではないかと考えていたので、政治に関われる官僚になりたいと考えていました。だから、官僚になりやすい法学部に進学するために、文科Ⅰ類を受験しました。大学入学後も、基本的には官僚になろうと思っていましたね。
──そんななかで、最終的には官僚になられていないわけですが、どのような変化があったのでしょうか?
大学に入った後、世の中を良くしていく上でそもそも自分が官僚になる事が最良なのかを色々な活動を通じて考えたいと思っていました。最初は社会起業家を支援するNPOでインターンをしました。社会課題を解決したいという強い思いを持った人たちがそこには集まっていたのですが、収益化のハードルが高く事業拡大の難しさを感じました。学生の私では起業家の相談相手にはなれませんし、資金の提供もできない中で、本当に支援できているのかとてももどかしかったです。ただ、そこで起業家という本気で世の中を変えようとしている存在に初めて触れる中で、政治ではなく起業でも世の中を変えられる可能性があるのではないかと思いました。
そこで、今度は起業をしてみたいと思うようになりました。まずは、自分自身でサービスを作ってみようと思い、「ut palette」というサービスをリリースしました。現在のUTmapさんがやろうとしていることと近くて、東大生の生活を支援するようなアプリを開発しました。
──なるほど。その「ut palette」をご自身で開発されて何か心境に変化はありましたか?
まず、「本気でこれをやりたいんだっけ?」と思うようになりました。東大生向けの採用イベント等も開催して企業からお金も頂いていたのですが、一生をかけてやりたいことではないなと感じていました。
私は、特定領域というよりも社会全体を良くしていきたいという思いがあるので、何か一つについて一生をかけて取り組むというよりも、様々な新しい取り組みに関わり続ける方が向いていると当時認識しました。
そんな時に、ベンチャーキャピタリストの方とお会いする機会があり、VC(ベンチャーキャピタル)という会社とそこで働くベンチャーキャピタリストという仕事の存在を知りました。起業家を支援しながら、新たなものを作るお手伝いをするという仕事内容が、当時の私のやりたいことに非常に近いと思い、非常に興味を持ちました。
──留学もされたとのことですが、どうして留学されたのですか?
シアトルのワシントン大学に1年間留学に行っていました。「ut palette」の経験を経て、ビジネスについて何もわかっていないことを気づいたことが、留学のきっかけです。
──留学中にキャリアに対する意識の変化はありましたか?
留学してからも自分のキャリアについて考えていました。高校生からの思いであった「世の中を変える」とはどういうことだろうかと考えました。当時は、まだ官僚という選択肢も十分に残っていたので、官僚の道に進むか、民間企業に勤めるか、起業をするかを迷っていたんです。そのなかで、自分が生まれてきてから政治で世の中が大きく変わった事があったっけ?と振り返りました。あまり実感としてはなかったなと。それよりもインターネットの広がりの中で世の中がガラッと変わってきたなと思いました。よくよく人類史を振り返ると、古代であれば農耕技術の発達、近代であれば蒸気機関の発明による産業革命と新しいテクノロジーが誕生して普及したタイミングで社会が大きく前進していると気付きました。
そこで新しいテクノロジーを生みだして、普及させていく事に関われる仕事に就きたいなと考える様になりました。ただ、自分が世の中を変えるほどのテクノロジーを生み出すエンジニアサイドになれる確信は持てなかったため、新しいテクノロジーを生み出した人を支援し一緒に世の中に普及させていくビジネスサイドの人間として仕事をしていこうと思いました。
そして、その仕事こそがベンチャーキャピタリストの仕事であると思うようになりました。
──そういった背景でVCを志望されたのですね。実際にどのように就活をしましたか?
留学中に、留学生向けの就活イベント「ボストンキャリアフォーラム」というものに参加しました。そこで現在入社した会社を知り、採用していただきました。
──学生時代にやっておけばよかったと思うことがあれば教えてください。
急成長のテックスタートアップで働いてみたかったです。成長している会社ってこんな感じなんだというのを体感していれば、よりベンチャーキャピタリストとして奥行きをもった仕事ができたかもしれないなと思います。
学生で働くとしたら自分のレベルよりも少し高いレベルの仕事がもらえるフェーズの会社がいいかなと思います。人員拡大フェーズが一旦落ち着いてる会社だと、組織が出来上がっていて裁量権がある仕事の枠が無かったりするので、インターン生には雑用のような仕事しかさせてもらえないかもしれません。これから大きくなっていくような「第一拡大フェーズ」の会社に入ったほうが、難しい仕事を振られ、結果として成長できるのではないかと思います。
たとえば、私の投資先のカンリ―という会社が「第一拡大フェーズ」の会社です。店舗事業者向けのソフトウェアを提供している会社で、数億円の資金調達を完了してこれから一気に事業を伸ばしていこうとしています。この記事を読んでいる東大生の方々にとって適切な難易度の仕事が沢山あるのでオススメです。
──VC(ベンチャーキャピタル)とはどのようなことをする会社でしょうか?
一言で言うと、スタートアップに投資している会社です。高い成長性が見込める会社に資金を拠出し、その対価として株式を取得します。投資先の会社が成長すると、それに伴って株式の価値も上昇するので、将来的に保有株式を売却(Exit)することで、株式売却益(キャピタルゲイン)を得るというのがビジネスモデルです。
投資資金は、金融機関や機関投資家(証券会社など)、事業会社などから集めています。弊社の最新のファンドでは約800億円の資金を運用しています。Exitは、上場やM&Aなどのタイミングになります。
また、資金提供して終わりではなく、事業を成長させるための様々な支援も行います。取締役会に出席して議論するなど、日々経営課題を考えながら一緒に仕事をする他、人材採用や営業、マーケティング活動を一緒に行うこともあります。会社の中の人になって一緒に手を動かしながら事業を伸ばしていくのがコンサルの仕事とは異なる部分です。未上場の会社が上場するには、早ければ数年、長ければ10年ほどかかります。だから、投資先の会社とは、一時の付き合いではなく非常に長いお付き合いになります。
投資家という側面と、事業を成長させていくという事業家という側面の双方の特徴があるのが、ベンチャーキャピタリストという仕事です。
──実際に白川さんはどのような業務をされているのですか?
通常業務では、大きくソーシング、デューデリジェンス(DD)、投資実行、投資先支援の4つがあります。
ソーシングというのは、投資先を探す業務のことです。色々な起業家にお会いして事業計画についてディスカッションし、投資したい、投資すべきだという会社を探します。実際にそのような会社に出会えた場合は、DDをします。DDとは投資検討のことで、事業の成長性やリスクを深いレベルで理解し、投資の確度を高めていきます。DDの後に、社内で投資すべきと合意が取れれば、会社側と投資の条件を詰めて、実際に投資を実行します。投資後の支援では、投資先の会社の成長に関するお手伝いを幅広く行ないます。
──日本ではVCが多すぎるという話を聞いたことがあるのですが、実際にどうなのですか?
まず、大前提としてVCが増えることはいいことだと思います。というのも、海外と比べると日本のVC市場はまだまだ小さいです。日本のスタートアップに対する年間投資金額はアメリカの数十分の一です。有望なスタートアップを日本で増やしていくためにはまだまだ未上場企業に流れる資金の総量が足りないと思っています。
過去にも景気の波に伴ってVCの数が大きく増えたタイミングはありました。現在もVCの他、コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)や事業会社からの直接投資も増加傾向にあります。ただ、資金提供をするだけでなく、投資先に関わって成長のサポートまでできるVCは多くはありません。キャピタリスト1人に対する投資先が増えれば増えるほど1社あたりに割けるリソースは手薄になってしまいます。しっかりスタートアップ支援をするには、相応の数のベンチャーキャピタリストが必要です。起業家の数が今後もさらに増えることを考えると、ベンチャーキャピタリストも増えていかないといけないのではないかと思ってます。
──新卒でVCに入社される方は多くないと思うのですが、新卒入社として意識していることはありますか?
業界に経験豊富で実績がある先輩方が多い中で、若手としてどう立ち回って結果を出していくかということは常に考えています。その中で、大きく2つのことを意識しています。
1つは、若いからこそ戦えるフィールドで戦うということです。数十年分の経験の差がある先輩には、知識で勝負しても負けてしまいます。だから、先輩のキャピタリストが知識がない、理解が難しい領域で戦おうと思っています。若者と年配の方で知識の差がない新しいテクノロジー領域、若者の感性でしか理解できないSNSやエンタメ領域、などが例として挙げられます。私の投資先の音声SNSのパラレルは、国内のC向けサービスでトップクラスに成長していますが、このスタンスをもっていたからこそ投資に至った先です。
もう1つは、他の人は注目していないけれど、今後成長する領域を見つけるということです。先ほどお伝えしたように、ベンチャーキャピタルは投資業なので、株を安く仕入れて、高く売ることで利益を得るビジネスです。多くの人が良いと評価している会社というのは、仕入れの段階で既に株価が高くなるので、大きく利益を得るのは難しくなってしまいます。だから、私はベンチャーキャピタル業界で流行りの領域は無視しています。たとえば、SaaSというソフトウェアの領域が現在VC業界で注目されていますが、私は積極的には追っていません。SaaSの会社に投資するとしてもSaaSの次のトレンドを見据えている会社に投資したいと考えています。
──なるほど。新卒でVCに入るメリットがあれば教えてください。
ベンチャーファイナンスには一番詳しくなれる職種だと思います。ファイナンスに詳しくなるなら投資銀行や銀行もあるかもしれませんが少なくともベンチャーファイナンスについて専門性を深めるには、VCに入ることが一番の近道だと思います。実際に、弊社出身でベンチャー企業のCFOになられている方もいらっしゃいます。
──最後に東大生へのメッセージをお願いします。
VCの仕事面白そうと思ってもらえましたでしょうか。私にとっては現状考え得る最高の仕事ですが、この記事を読んでいる方々全員にとってVCになるのが必ずしも人生において最良の選択になるとは当然ながら思いません。東大生は選択肢が多く、将来について悩む事が多いと思いますが、自分の人生で何をなしたいかを根気強く鬱々と考えた上で、周りとの比較や見栄え抜きでこれがやりたいんだという道を見つけられるのが最高だと思ってます。
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UTmapの記事をお読みいただきありがとうございました。