インタビュー・レポ

多様なバックグラウンドを持つ学生が集まるからこそ考えられる、農業の未来|UGIP クボタ企画 参加者インタビュー

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東京大学が、グローバル人材の育成のためにさまざまな企業と共同で開催している東京大学グローバル・インターンシップ・プログラム(UGIP)。

2023年度の株式会社クボタの企画は、クボタのタイ拠点を訪問し、グローバルな問題となりつつある食料問題への解決策を提言するもの。

今回は、プログラムに参加した農学部4年の五ノ井凛さん、教養学部理科Ⅰ類2年の福地理史さんに話を聞きました。

食料問題、農業への関心が共通項

UTmap編集部:
自己紹介をお願いします。

五ノ井:
農学部の生物・環境工学専修の4年生、五ノ井凛と申します。部活はホッケー部に所属しており、主将を務めています。農業、食料問題に関心があって、クボタという会社にも興味があったので、UGIPに参加しました。

福地:
教養学部理科Ⅰ類所属、4月から2年生の福地理史と申します。部活は運動会スキー山岳部です。私も、農業に関心があり、基礎的な農業が実際にどのように行われているか見たくて、今回UGIPに参加しました。

UTmap編集部:
お二人がUGIPに参加しようと思った理由、きっかけをもう少し詳しく教えてください。

五ノ井:
今回のプログラムを知ったきっかけは、大学からの告知のメールでした。そもそも、食料問題の関心があったことと、そろそろ就職について考えなきゃいけない時期だった中、クボタに興味があったのもあり、いい機会かな、と参加を決めました。

福地:
私がこのプログラムを知ったきっかけは、大学前に掲示されていたこの企画のポスターを見たことですね。農業に興味があり、特に農業の現場に近づける機会が欲しいな、と考えていたので、ちょうどいい機会だと思って応募しました。

五ノ井:
私たちに限らず、他の参加者を見ても食料問題とか農業に関心のある人は多かったと思います。関心がないという人は、ほとんどいなかった印象です。ただ、工学系・化学系の人はもちろん、経済とか法学とか、農業に関係ない学部に所属する人も多かったな、と思います。

内容は人それぞれ? 一筋縄ではいかない面接対策

UTmap編集部:
選考の内容について教えてください。

五ノ井:
選考過程としては、書類選考の後に面接という形でした。面接で聞かれたのは、志望動機のこともそうなのですけれど、私がホッケー部に所属しているので、そこでどんなことをしているのか、みたいなところを結構掘り下げられましたね。

福地:
僕の場合は、応募書類に書いたことをベースに面接が進みましたね。あんまり部活の話とかはしなかったです。プログラムに応募した当時は、宇宙農業に関心があって、それを書類に書いていたので、宇宙で農業をするということにどういうビジョンがあるのか、みたいなところを掘り下げられました。他には、応募書類に英語に関する経験を書く欄があったので、高校時代に留学生と交流するプログラムについて書いたのですが、それについても話をしました。

「100年後の地球にできること」を本気で考える

UTmap編集部:
プログラムの内容について、詳細に教えてください。

五ノ井:
選考を通過した後は、合格者説明会があり、プログラムの全体像や海外での危機管理に関する説明がありました。その後、キックオフセッションという形で、参加者の自己紹介、テーマについてチームで話し合いました。合格者説明会の段階で、チームに分かれて取り組む課題を決める、ということが共有されていたので、どういう課題に取り組むか、ZOOMで話し合ってからキックオフセッションに臨みました。

企画全体を通して、クボタからファシリテーターの方が入ってくれていたんですが、グローバル理解についてとか、広い視野の持ち方を話してくれたり、それぞれのチームに対してクリティカルな視点でアドバイスを頂きました。

今回の企画全体のテーマは「100年後の地球にできること」とだいぶ大きなものだったので、それを具体的に取り組みたい課題に落とし込んで、発表するのもキックオフセッションの一つの目的でした。

私のチームの課題は、プログラムの進行に伴って変わっていったのですが、最初は、農村から都市に人口が流れていく中で、農村の働き手不足が食料生産に打撃を与えているよね、という人口流出を解決すべき課題として設定していました。

福地:
私は五ノ井さんとは違うチームだったのですが、特に事前相談とかはせずに、キックオフセッション中のグループワークの時間に、何をやろう、みたいな話をしてました。チームに食料供給のサプライチェーンの話に関心のある人が多かったので、最初はそのあたりをテーマとして設定していましたね。ただ、やっぱりタイに行って現地を見る中で、事前に持っていた仮説が変わった部分もあり、最終的な課題は変わっていきました。

現地見学を経て学んだ機械のすごさ、人間のすごさ

UTmap編集部:
キックオフセッション後の工場見学や、渡航前の事前セッションについて、どのようなことを行ったのか教えてください。

五ノ井:
工場見学は、筑波工場で、エンジンやトラクタが実際に組み立てられる様子を見学しました。見学した後は、グループワークの時間が設けられていて、最初に発表した課題に対するフィードバックを経て、改めて検討した課題を発表する、みたいな感じでしたね。

福地:
事前セッションは、クボタのタイ現地法人の駐在員とのオンラインセッションで、タイの農業の概観とか、クボタのタイ法人が現地でどういう活動をしているのか、予習したような形でした。

UTmap編集部:
では、実際にタイ現地での活動の様子についてお聞かせください。

五ノ井:
1日目は移動日だったので、実際にプログラムが開始したのは2日目っていう感じでしたね。2日目は、ハーモニーライフというオーガニック農園を訪問しました。タイに移住した日本人の方が25年近くやっている農園なんですけど、一切農薬を使わず、植物本来の力、抵抗力を高めることにこだわって、信念をもってオーガニック農業をされていました。タイは、日本に比べてあんまりオーガニック農業が進んでないんですけど、その状況に危機感を抱いていて、タイでの普及活動にも積極的に取り組まれているとのことでした。UGIP参加者にも、最初はオーガニック農業に懐疑的な人も結構多かったんですけど、話を聞くうちに、オーガニック農業の価値に気づかされた人が多かったと思います。

福地:
オーガニック農園に関しては、生命、植物の命の力を大変強調されていて、実際成果が出ているのは素晴らしいな、と思いました。ただ、その一方、抽象的で再現性が低いんじゃないかな、と思った部分もありました。なので、うまくいくメカニズムの解明だったり、同じようなオーガニック農法でもうまくいく場合とうまくいかない場合の差を定量的にちゃんと測っていく、みたいなことをやってみたいな、と思いましたね。

五ノ井:
3日目はタイでの工場見学だったのですが、事前に筑波工場を見学していたこともあって、そこと比較できたのはよかったです。

工場などで、タイの現地スタッフの方と話すときは、日本語タイ語間の通訳が入ってくれるので、抵抗なく質問ができたのはありがたかったです。どうしても、英語だと第二言語同士なので、伝わらないニュアンスが多かったんじゃないかな、と思います。

UTmap編集部:
タイで訪れた場所で、特に印象に残っているのはどこですか?

五ノ井:
クボタファームという、クボタが持っている先進的な農業を提案する実証型農場が特に印象に残っています。先進的な機械の実験場になっているエリアもあれば、様々な農法を試行するエリアもあったりして。そこを訪ねた際に、ゲーム形式でいろんなことを教えていただいたんですね。我々がチームに分かれて、ゲームに勝ったら得点をもらって、最終的に得点が高いほうが景品として大量のお菓子をいただく、みたいな。それがすごく楽しかった、ということ自体もあるんですけど、クボタはそういうレクチャーを視察に来る人たちに無償でやってるんですね。そういう意味で、営利目的で機械を売るだけじゃなく、社会貢献的な側面も有している企業なんだ、というのが非常に印象的でした。

福地:
レクチャーの内容もよく練られていて、試験場内の田んぼで、2チームで実際に田植えをするんですね。どっちがより早く田植えができるか競って得点を付けるんですけど、そのあとにクボタの機械を使った田植えを見せてもらう。そうすると、農機の価値が説得力を持って伝わるんですよ。実際に農業を体験しながら、機械のすごさとか、逆に人間のすごさを感じられるゲームが用意されていて、よく考えられてるな、と思いました。

UTmap編集部:
バンコクやウドンタニなど、タイの中でも様々な場所を訪問していますが、地域による農業や暮らしのあり方の違いなどは感じましたか?

福地:
だいぶ違いましたね。バンコクで滞在したエリアは、バンコクの中でもトップクラスに栄えてるエリアだったんですけど、それこそ吉祥寺とか立川くらいには栄えているイメージでいいと思います。そこからウドンタニに行くと、北海道みたいな、農地がどーんと広がっているようなところがあったりして、結構地域による差は激しいと思います。

バンコクから車で1,2時間くらい走るだけで、国道沿いに店があって、それ以外は畑、みたいな田舎っぽい雰囲気になりますね。どんどん人が都市に集まってきているのは日本でもタイでも変わらないんだな、ということは感じました。

思いの詰まった最終発表

UTmap編集部:
タイから帰ってきた後の報告会で何をしたか、お聞かせください。

五ノ井:
まず、タイ最終日の時点で英語での中間報告会があって、それぞれのグループが設定した課題に対する解決策、みたいなところの大枠はその時点で固まっていました。日本に帰ってきてから1週間後くらいに最終報告会があったのですが、それまでにした作業としてはスライドを日本語に訳したり、微修正をかける程度で、内容自体はほとんど中間報告と変わらなかったと思います。

発表時間には制限があったのですが、どのグループも言いたいことがありすぎて、オーバーしちゃってましたね。どのグループも、それぞれ議論を重ねてきているので、いろんな思いが詰まってるんだろうな、と思いながらみんなの発表を聞いていました。

福地:
報告の内容としては、クボタへの提言みたいな形が多かったのかな、と思います。何かしら新規事業を提案するものや、もうちょっと思想的なところを提案、提唱する形で発表するグループがほとんどでした。

譲り合い合戦? 実感するタイの人のやさしさ

UTmap編集部:
タイで10日間過ごしてみて、感じたことはありますか?

五ノ井:
駐在員や現地の方と話して印象的だったのは、楽しそうに働いている人が多かった、というところですかね。また、タイの住みやすさを強調している人も多かったです。実際私も1週間タイで暮らして、ごはんもおいしいし、ちょっと暑いけれど、いい国だな、と思いました。

福地:
五ノ井さんも言ってた通り、タイの暮らしやすさは痛感しましたね。日本食レストランが多かったり、そもそもタイは親日国だったりということもあるので、日本人にとってはすごく生活がしやすいかな、と思いました。食事は合う合わないあるとは思うんですけど、私は辛い物が結構好きなので、気に入って食べてました。ただ、不足しがちなカロリーを補うため、デザートがすごく甘いのだけは懸念点です(笑)。

あと、暑いことは暑いんですけど、タイにいたのが乾季ということもあって、38度あっても日本の38度とは比べ物にならないくらい快適に過ごせましたね。

あとは、人が優しいな、っていう感覚はありましたね。電車に乗っていて、お年寄りが乗ってくると、1人のおばあちゃんに5人が席を譲るんですよ。譲り合い合戦みたいになっていて、おばあちゃんも素直に、ありがとうね、って言って座って。日本だとなかなかこうはならないな、と思いました。道を渡るときも、交通量が多いので結構怖かったりするんですね。でも、道に出て渡りたい感じを出すとすぐ止まって渡らせてくれて。

そのあたりは日本と違って、お互い自己主張は強いんですけど、うまく折り合いがつくようになってて面白いです。人に対して不快感を覚えることはすごく少なかったですね。

UTmap編集部:
タイに行ってみて、海外で働くことへの意識の変化はありましたか?

五ノ井:
そうですね。もともと海外で働くことへの抵抗はそんなになかったんですけど、日本と海外、それぞれで違う課題を抱えてるんだな、ということが実感できて、海外で働くのもおもしろそうだな、と改めて思いました。

充実したプログラムのスケジュール

UTmap編集部:
プログラム中に大変だったことを教えてください。

五ノ井:
個人的に大変だったのは、ディスカッションの時間があんまり取れなかったことですかね。現地で学んだこと、思ったことはいろいろとあったんですけど、それに対応する形で事前に準備していた課題、テーマをそもそも変える必要もあるし、それに対する解決策も考えなきゃいけなかったんです。それを話し合う時間を確保するために、夜遅くとかに集まることもあったんですけど、朝がめっちゃ早かったので、体力的にはしんどかったですね。楽しかったが100倍勝つんですけど、しんどさは確かにありました。

福地:
スケジュールが15分単位で組まれているほどカツカツで、移動が長いのもあって、体の疲れは結構たまりやすかったですね。ただ、これ以上ゆとりを持たせたスケジュールだとどうしても間延びしてしまうかな、とも思うので、充実した10日間を過ごすにはちょうどいいスケジュールだったのかな、とも思います。僕はバッチリ帰国後に風邪をひきましたけど(笑)。

UTmap編集部:
プログラム中に楽しかったことを教えてください。

五ノ井:
プログラム参加者と親しくなれたのはうれしかったですね。いろんなバックグラウンドを持つ、個性的な人が集まっていて、結構移動時間が長い日も多かったので、いろいろな人の話を聞けたのは楽しかったです。農業について学んだのもおもしろかったですけど、それと同じくらい、いろんな人と出会えて、話せたのもおもしろかったです。

福地:
五ノ井さんとも被るところなんですけど、参加者と話すのがすごく楽しかったです。東大生から選抜された20人となると、みんな何かを持っている人たちなので、聞けば聞くほど面白い話が出てくるんですね。僕も自分のことをいっぱい喋って、自分に対する解像度があがるところもありましたし。

参加者も学部の1年生から修士学生までいたので、これからの大学生活の話を聞けたりしたのもよかったです。

夜更かしして、みんなで3時になっても喋ってる、みたいな状況もあって。修学旅行みたいで楽しいね、っていうことも言ってましたね。

UTmap編集部:
参加者間での交流は今でもありますか?

五ノ井:
ありますね。おもしろそうな授業があるよ、っていうので誘われて、一緒に授業取ろうとしている人もいますし、クボタのラグビーチームの試合に招待していただいたので、そこに可能な限りみんなで観に行きたいね、っていう話もしています。

福地:
僕はタイでの経験を経て、新しくSNSを開発しようと思って、プログラム参加者と二人でシェアオフィスを借りて、プロジェクトを始めようとしています。そういうおもしろいことを一緒にやれる仲間を見つけられるのも、UGIPならではの魅力なのかな、と思います。人と出会える場っていうのは他にもいろいろあるとは思うんですけど、同じ体験を共有したからこそ、同じ目線で喋れる部分があったりするので、そこはすごく面白いですね。

人生が変わる10日間

UTmap編集部:
このプログラムを通して得られたものってなんでしょうか。

福地:
それこそ、さっき話したSNS開発の話なんかは、最終日の夜に徹夜で話しているうちに、頭の中にあったものが形になって始めることになったんですね。なので、UGIPに参加していなかったらやらなかったことだろうな、と思います。農業とは直接関係ないですけれど、こういう企画があったからこそ生まれるものってたくさんあるんだろうな、と思いますね。

五ノ井:
私は、就職先としてクボタに興味があったこともあって、社員の方と話して仕事についていろいろ聞けたのはうれしかったです。加えて、普段関わらないような人と出会えて、このプログラムに参加していなかったら全然違う人生になってたんだろうな、と思うくらいの大きな経験だったと思いますね。

農業を学んでいない人こそ大歓迎

UTmap編集部:
これから参加を検討している人へのメッセージをお願いします。

五ノ井:
私自身は、農業に大きな関心を持っていたので参加したんですけど、そこまで農業を深く学んでいなくても、農業って面白いかも、と思って参加している人もたくさんいました。なので、農業自体にそんなに関心がなかったとしても、参加してみるとすごくいい経験になると思います。いろんな人が応募したほうが、結果的にいいプログラムになると思うので、少しでも気になったらぜひ応募してみてください。

福地:
私たち二人は農業に強い関心があったんですけど、我々以外はむしろ全然関係ない分野を学んでいる人も多かったんですね。そういう人が、自分の専門を極めていった先で、自分の専門が農業や食料生産とどう関係するか、っていうのを考えるいい機会になると思います。そういう意味で、私としては農業に興味がある人はもちろん、ない人にもぜひ参加してほしいな、と思っています。農業に興味を持ったことがない人にこそ、参加してもらって農業って何だろう、食って何だろう、と考えてもらうことに大きな意味があるかなと思います。

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