長期インターン/就活
【一橋生採用強化中】急成長中のDXファームが仕掛ける「文系✕経営幹部候補」の採用とは
役立つ就活・キャリア情報
こんにちは!一橋map運営メンバーの商学部1年はちです。
シラバスだけでは読み解けない授業の特徴や魅力を、担当教員にインタビューしながら紹介する「超!シラバス」。
今回は、商学部で夏学期開講の「企業と倫理・社会」の授業を担当される田中一弘先生にインタビューをしてきました!
※本記事に掲載されている内容は、取材時点でのものです。最新情報はシラバス等をご確認ください。
企業と倫理・社会
科目分類:商学部基礎科目
開講時限:夏学期 月2,木2
担当教員:田中一弘先生
形式:対面、抽選あり
1990年に一橋大学商学部を卒業して、日本興業銀行(現・みずほ銀行)に入行しました。その後、研究者になる決意をして一橋大学に戻り、博士号を取得しました。神戸大学で4年間教えた後、2003年から一橋大学で教えています。
研究分野は経営哲学と企業統治です。
大学での教育活動の中では、学部生だけでなく、大学院のMBAで30〜40代を中心とした社会人学生や、一橋シニアエグゼクティブ・プログラム(HSEP)で大企業の役員クラスの方々とも日常的に議論をしたり、企業研修で教えたりする機会もあります。
この授業では、研究者としての成果だけでなく、こうした多様な実務家との関わりを通じて得た経験や実践的な知見も活かしていきたいと考えています。
経営哲学の分野では、義と利の両立、つまり道徳と経済をいかに両立させるかという問題を考えています。両者は本質的には両立可能だと思っていますが、だからといって自動的にうまくいくわけではありません。では、どうすれば本当に意味のある両立が可能になるのか、という点が重要な論点です。
このテーマは研究だけでなく、学部教育においても重視しており、授業内容とも密接に結びついています。私の研究と教育に通底するキーワードは、「責任」「義利合一」「良心」の3つです。
まず「責任」については、損得勘定とは別に存在する、本当の意味での責任とは何かを、特に企業や経営者との関係で考えます。企業の責任とは何か、経営者はどのような責任を果たすべきなのか、という問いです。
次に「義利合一」についてです。倫理や哲学の文脈では、利益はしばしば否定的に捉えられてしまいますが、少なくとも経営学を学ぶ以上、利益は無視できません。そのような見方に立って、義と利をどのように両立させるかを考えています。もっとも、これは実際のところ経営に限った話でもありませんね。「どのように生きるか」という日常的な問いにも応用できる考え方だと思っています。
そして、私の研究の中心にあるのが「良心」です。この「良心」から出発して、責任や義利合一の議論が展開していきます。
これらの研究テーマを下敷きにして、この授業は組み立てられています。
まず一番伝えたいのは、「義」と「利」をきちんと区別できるようになってほしいという点です。
この区別に意識的であることが必要です。そうでないと、両者は知らず知らずのうちに混同されがちです。この授業では、「義とは何か」「利とは何か」を整理し、混同せずに考えられるようになることを重視しています。そこが、この授業の勘所と言えるでしょう。
例えば、「子供の読書を奨励するためにお金をあげる」という行為を考えてみると、「それで子供が本をたくさん読むようになるなら、それは良いことなのだから、結構ではないか」と思う人もいるかもしれません。しかし、そこには「読書という経験そのものに価値を見出すこと(義)」と、「お金をもらうこと(利)」という、別の次元のものが含まれています。この二つが整理されないまま「子供に本を読ませたければ金銭的インセンティブを与えればよい」とまとめてしまうことは、義と利を混同しています。
この授業で伝えたいのは、お金が悪いということではありません。そうではなく、「何が義で、何が利なのか」をきちんと切り分けて考える視点を持つことです。
その次の段階として大切にしているのが、「義を先に、利を後にする(先義後利)」という考え方です。ただし、これは価値観に関わることなので、「必ずそうしなければならない」と強制するつもりはありません。人によっては「それは受け入れられない」と感じることもあるでしょう。また、「先義後利」の実践自体も、必ずしも容易ではありません。
受講者には、少なくともこうした考え方があることをきちんと理解してもらったうえで、最終的に自分はどのようなスタンスでビジネスに臨むかを自分で決めてほしいと思っています。むろん私個人としては、受講者の一人でも多くが「先義後利」を自分なりに納得し、社会人になってからも意識し続けてもらえたら、という思いがあります。
一橋生として、本学の校是である「キャプテンズ・オブ・インダストリー」の本当の意味を知りたい人には、ぜひこの授業を受けてほしいと思っています。
トマス・カーライルの言う「キャプテンズ・オブ・インダストリー」(産業の指揮官)とは、単なる産業界のリーダーではありませんし、ましてや金儲けの親玉でもありません。利益至上主義には決して陥らず、一緒に働く人々を大切にして様々なステークホルダーと長期的な信頼関係を強固に築きながら、そのうえで、きちんと利益も上げていく存在です。これはまさに「先義後利」であり、同時に「義利合一」の考え方に基づくリーダーのあり方です。
「先義後利」というと、利益を軽視することだと誤解されがちですが、決してそうではありません。その一方、損得勘定だけで動く人は、キャプテンとは言えない。義を先に置き、信頼を大切にしながら、それでも結果としてしっかりと利益を生み出す。そこにこそ、本来の「キャプテンズ・オブ・インダストリー」の姿があるのです。
だからこそ、もし「キャプテンズ・オブ・インダストリー」を目指したいという思いを少しでも持って一橋大学にいるのであれば、ぜひこの授業を通じて、その本当の意味を理解してもらいたいと思っています。
この授業では、最終的にどこかで自分なりの答えを持つことを求めます。
「答えがないから」と考えることを避けてしまうと、多くの人が同意しやすい「利益」や「効率」といった方向に流れてしまうからです。
例えば「先義後利」は、この授業で提示する一つの考え方です。しかし、先ほども言ったように、それを無条件に受け入れよと押しつけるわけではありません。こうした考え方があるということを踏まえたうえで、自分はどう思うのか、どうしたいのか、を問い直してほしいのです。
そうして出した答えが最終的に正しいかどうかは分かりません。それでも、「今の自分はこう考える」と言えるだけの論拠を自分の中に持つことが大切です。そして、その論拠は他者との議論の中で磨かれていきます。
相手に押し付けるのではなく、対等な立場で意見を交わす。その過程で、自分の考えを修正し続けることが、結果として社会をより良くしていくかもしれません。この授業は、そのための思考と議論のトレーニングの場です。
確かに、スライドの枚数も多く、量が多いと感じるかもしれません。とはいえ、この授業で伝えているメッセージ自体はとてもシンプルです。全体を通して、基本的には同じことを繰り返し伝えています。
実質的には、同じ内容を、新しい話題や別の切り口を用いて、さまざまな方向から説明していく形です。考え方が人の中に定着するためには、繰り返し触れることが必要です。これは、企業の経営者が経営理念を浸透させるために、同じメッセージを何度も伝えるのと同じだと思っています。
そのため、授業では「身につけてほしい考え方」を意識的に何度も取り上げています。根幹となる部分を意識して聞いてもらえれば、進むペース自体はそれほど負担にはならないと考えています。
直接的に強く結びつく授業があるわけではありませんが、見方によってはすべての授業に関わる内容だと言えます。この授業で学ぶ視点は、皆さんがこれまで受けた、あるいはこれから受ける授業を少し違う角度から捉え直すための「眼鏡」のようなものです。
商学部では多くの場合、「良いことをいかに上手に行うか」を学びますが、「そもそも何が良いことなのか」を正面から考える機会は多くありません。その点で、この授業は異なる役割を担っています。
ただし、この視点をもとに他の授業を批判的にとらえるのは本意ではありません。むしろ、他の授業をより深く理解するための補助線として活用してほしいと思っています。
シラバスの通り、小テストと期末試験を通じて成績を評価する予定です。
小テスト(複数回)〔25%〕と期末試験〔75%〕とによって評価する予定である。(シラバスより)
経営やビジネスを学ぶ中で、経営哲学をここまで体系的に扱う授業は、他の大学でもあまり例がないのではないでしょうか。普段はなかなか学ぶ機会のない考え方を、ぜひ今のうちに身につけておいてほしいです。
商学部の授業を真面目に学ぶことはもちろん大切ですが、それと同時に、こうした倫理や哲学的な視点を持っていることは、社会に出ていくうえでとても重要です。仕事をすれば、必ず「義」と「利」の葛藤に直面します。そのときに、何が義で何が利なのかを区別し、どうやって両立させていくのか。そうした考え方の型を、自分の中に持っておくことが大切です。
また、「利」は金銭的な利益だけを指すわけではありません。社会的な地位や評判など、さまざまな「利」との向き合い方にも応用できます。
この授業を受けることで、矛盾に満ちた社会の中で自分が進む方向を見失わないための羅針盤を得ることができ、どんな仕事に就いたとしても必ず生きてくるはずです。
