インタビュー・レポ

「最高に楽しい」インド研修|UGIP ソフトバンク企画 参加者インタビュー

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東京大学が、グローバル人材の育成のためにさまざまな企業と共同で開催している東京大学グローバル・インターンシップ・プログラム(UGIP)。

2022年度のソフトバンク株式会社の企画は、実社会のデータを使ったAIを開発するハッカソン。上位入賞者にはインドでの海外インターンが賞品として用意されました。
今回は、実際にプログラムに参加した工学部機械情報工学科4年のアネクワット・タナチャイさん、工学部電気電子工学科3年の立花卓遠さんにプログラムの魅力や苦労、得られた成果などを聞きました。

UGIPで充実した春休みに

UTmap編集部:
UGIPに参加したきっかけを教えてください。

立花:
電気電子工学科への内定が決まってから周りを見てみると、プログラミングの経験豊富な人ばかりで、そういう人たちが好んでハッカソンというものに出ているらしい、ということを知りました。そんな中、UTASに掲載されていたこのプログラムの存在を、締め切り一カ月前に知って。ハッカソンに出てみたいとは思っていたし、賞品としてインド研修も行けるなら申し込もうと思いました。

仲のいい友人と参加した方がいいと思い、経済学部と理学部物理学科に行ったクラスの友人2人を誘って参加しました。

タナチャイ:
春休みを有意義に過ごそうと思い、いろいろと探していた中で見つけたのがこのハッカソンでした。面白そうだし、インドに行けるチャンスもあるなら、と思って友人を誘って申し込みました。

アイデア・開発両面での手厚いサポート

UTmap編集部:
他のハッカソンと比較して、このプログラムはどのような特徴がありますか?

立花:
主催がソフトバンクということもあって、プログラマーに限らず、コンサルティング担当の人やAIに習熟した人など、いろんな人と壁打ちできる機会が豊富だったのは大きいですね。初心者も参加しやすいし、アプリの構成だけでなく、テーマそれ自体にもフィードバックをもらえるところは特徴的と言えるかもしれません。

タナチャイ:
やっぱり、サポートの手厚さが大きな特徴だと思います。僕は昔からいろんなハッカソンに参加しているんですけれど、1カ月かけて、勉強しながらハッカソンに参加できると言うのは貴重な機会だと思います。

アイデアと開発が半々

UTmap編集部:
1カ月のハッカソン期間をどのように使いましたか?

立花:
やらなければならないことが、アイデア出し、実際の開発、プレゼンと大きく三つあって、それを1カ月かけて行う形でした。大体2週間かけてアイデアを出して、残りの2週間で開発、というような形で進めましたね。プレゼンは英語で行わなければならなかったのですが、プレゼン準備は直前に徹夜で終わらせました。

アイデア出しの段階では、経済学部のメンバーが中心となってアイデアを出し、ソフトバンクの方との壁打ちを経てブラッシュアップしました。

開発段階では、チームメンバー全員、アプリ開発経験がなかったのですが、ソフトバンクの方に技術的なアドバイスをもらえたのがありがたかったです。

開発のスケジュールも結構かつかつで、クラスのみんなといったスノボ旅行の夜も、メンバー3人で、部屋の隅っこでコーディングしていましたね。今となってはいい思い出です。

タナチャイ:
私も、半分をアイデア出し、半分を開発に充てました。データハッカソンということなので、データを中心に何を作るか考える必要があると思っていました。いろいろなデータを探して、それをどうSDGsと紐づけるか、どういうデータがテーマに対してインパクトを出せるか、ということを最初の2週間は考えていましたね。

どういうデータを使うか決めた後は、そのデータを使って、どういうアルゴリズムでどういうことをするかを決めました。

具体的には、工場の電気消費のデータセットを利用して、将来的にどういうアクションをすれば一番効率的に電気消費を抑えられるかを考えていました。3週間目には、40%電気を削減できる手法を開発できて、4週間目は発表準備に使いました。審査基準が4個ほど挙げられていたので、それに一つずつ対応していくような形で発表プレゼンを準備しました。

立花さんは実際のアプリを開発したとのことですが、僕はAIの部分だけ作って、ウェブアプリはモックアップを作成するに留めました。

開発期間中、僕はアメリカにいて、チームの残り2人は日本にいたので基本的にオンラインでの作業になりました。ちょっと辛いところもありましたが、最終的にはうまく進められました。

メンバー同士の親密さも強みに

UTmap編集部:
参加されるのはどのような方が多いですか?

立花:
参加者の層としては、情報系、電気系、機械の学生がほとんどだったかなとは思います。学部3,4年生が多かったですが、修士学生も参加していました。今年は、テーマのSDGsというところに触れていれば何を作ってもいい、ということだったので自分の研究分野を持ち込んでくる修士学生もいました。

UTmap編集部:
お二人ともご友人とチームを組んで参加されたとのことですが、友達とチームを組んで参加される方が多いですか?

立花:
友人同士で出ている人も多いですが、必ずしも全員そういうわけではなく、一人でやってきてプログラムの中でやりたいことが似ている人を探してチームを組んでいる人もいました。ただ、1カ月っていうのは、サービスを開発する期間としては短いんですね。そういう短い期間の中でチームとしてアプリを開発することを考えると、最初から親しく、言いたいことを遠慮なく言える友人同士の方が開発しやすいかな、とは思います。

役割分担で効率的に

UTmap編集部:
チーム内での役割分担はどのようにされていましたか?

タナチャイ:
僕たちのチームは3人ともエンジニアなんですが、日本にいる2人に開発面を主に担ってもらいながら、私は技術的なチェックに回っていました。開発面をやってもらっている分、私はどういうビジネスプランがよさそうで、どういうUI、UXがいいか、みたいなところを考えていました。

振り返ると、技術的な部分とビジネス的な部分があるので、そこで役割分担をちゃんとすると良いのかなと思います。

立花:
自分たちのチームは明確に役割を分けていましたね。経済学部のメンバーがアイデア出しの中心になって、理学部のメンバーと僕がコーディングを担当しました。その中でも、理学部のメンバーがAIの部分を担当して、自分はAI以外の部分のプログラミングをすべてやりました。担当部分を明確に分けたのは、共同開発する上で重要だったと思います。

他のチームも結構明確な役割分担をしているところが多かったように思いますね。1カ月という期間なので、役割分担をきちんとできていたチームは、最終的にいい結果を出せていたことが多かったように思います。

選ばれた3チームがインド研修に

UTmap編集部:
賞品のインド研修に参加できるのは何人なんでしょうか。

タナチャイ:
事前の勉強会に参加していたのが200人で、実際に発表したのは100人程度だったと思います。その中から、最終的にインド研修に参加できるのは9人とかですね。

立花:
倍率は高いですが、審査の採点基準はすごくしっかりしていました。ブラックボックスがなかったので、採点結果に納得感はありますね。

プログラミング未経験でも、重要なのは意欲

UTmap編集部:
ハッカソンに参加するにあたり、事前に勉強、準備した方がいいことはありますか?

立花:
大前提として、プログラミングがある程度できるのは、有利に進める上でも前提になってくると思います。ただ、自分たちのチームも全員学部2年生だったこともあり、すごくプログラミングスキルが高いわけではありませんでした。それこそ自分も初めて触ったのが2年前みたいな形だったので。

ただ、プログラミングも、大学でやるようなパイソンでアルゴリズムを作ったり、機械学習したり、みたいな学術的なプログラミングと、企業で使うようなモダンなプログラミングの2種類あると思うんですね。そういう観点からすると、私と理学部のメンバーがエンジニアインターンをしていて、そういうプログラミングを習得していたのは大きかったと思います。

逆に、学術的なプログラミングの能力がチームとして足りていないのは課題として認識していました。そこで、ハッカソン開始前に画像認識モデルの組み方などの有料講座をインターネットで視聴するなど、能力の不足を補うための努力をしていました。

ただ、プログラミングスキルは当然持っているに越したことはないですが、プログラミングができない文系の学生も、アイデア出しやテーマと開発するサービスの接続性の確保など、力を発揮できる部分は多いと思います。実際に、そのような部分も最終的な評価項目に入っていますし。

タナチャイ:
僕たちはプログラミング出来る人同士でチームを組んでいたのですが、プログラミングができない人でも、勉強の機会が用意されているのはこのハッカソンの特徴だと思います。無料で学習できる教材も用意されているので、プログラミング未経験でも、意欲さえあれば楽しめるプログラムだと思います。

成果が形になった達成感

UTmap編集部:
プログラム中に楽しかったことを教えてください。

立花:
先ほども話しましたが、スノボ旅行での開発はいい思い出ですね。3人でお酒を飲みながらパソコンで開発するのはとても楽しかったです。また、最後にアプリケーションが動いたときの感動もすごくて、皆で頑張ったな、という達成感はすごかったです。インド研修もすごい楽しかったですね。

タナチャイ:
私はオンライン参加だったので、対面参加できなかったこと自体は悲しいのですが、いろいろなアイデアを出したり、最終的にちゃんと成果になったことはうれしかったです。自分たちの1カ月の努力が形になったことも感動したし、他の参加者のプレゼンを見ていて、皆の努力を感じられたのもうれしかったです。

もちろん、インド研修も死ぬほど楽しかったです。1週間は短すぎると思ったくらいでした。

テーマに結び付くアイデアの選定に苦戦

UTmap編集部:
プログラム中に大変だったことを教えてください。

立花:
一番つらかったのは、アプリを開発するまでの環境構築ですね。アプリを作ろうと思ってすぐプログラミングに取り掛かれるわけではなく、アプリで使いたいライブラリやモジュール、いうなれば道具みたいなものを揃えるために開発環境を作る必要があるんですね。これは普段の学科の勉強では教わらないところで、ここに3日くらい費やしました。

あと、私含めてコーディング担当の2人は技術的にやりたいことを詰め込んだアプリを作ろうとしていたのですが、テーマとの接続性を考えたり、アイデアの精度を高めたりしているうちにアイデア出しに時間を取られてしまいました。最終的に開発に2週間しか取れなかったという時間的な制約が辛かったです。

タナチャイ:
テーマがSDGsと広かったので、そこから何を作るかの絞り込みに苦労しましたね。アイデア出しの段階では、とにかくたくさんアイデアを出してまとめて、出してまとめて、みたいなことを繰り返していたので、そこは大変でした。

あとは、AIは学習に長い時間がかかるのですが、普段研究室で使えるような計算機リソースがなかったのは辛かったですね。ただ、そこまで辛いことが多かったわけではなく、その程度でした。

勉強も遊びも充実、インド研修

UTmap編集部:
インド研修で何をしていたか、教えてもらえますか。

立花:
インド研修の話は私のブログにもまとめているのですが、勉強と勉強以外が半々くらいでしたね。

勉強の部分で言うと、現在、Chat GPTに代表される大規模言語モデル、LLMがアツいぞ、というところでLLMを学ぶのが研修の大半でしたね。インドのメガベンチャーを訪ねて、LLMの開発者や研究者から講義を受けました。その後、LLMを使ったソリューションを提案するなど、アイデアソンのような形の研修もありました。

勉強以外の部分の濃度はとんでもなかったですね。ずっといいホテルに泊まらせてもらって、ご飯も豪華なものを食べさせてもらって。ベンチャーでの講義中も間食の差し入れとかをしてもらいました。

もちろん観光地も連れて行ってもらいましたし、インドで有名なクリケットという球技の体験もさせてもらいました。インド滞在最終日のパーティーでは、訪れていた会社がインドの民族衣装をプレゼントしてくれて、皆でインドの食べ物や飲み物を食べました。

LLMについて学ぶだけでなく、インド文化にも触れることができる、すごい充実した1週間でしたね。

タナチャイ:
LLMについて学ぶ日が5日間用意されていたのですが、立花さんも言っていましたが最後の1日がアイデアソンでした。その日に、特許が取られている予測モデルのツールを使って勉強できたり、データ分析について勉強できたりしたのもうれしかったです。

勉強以外の部分も、本当に充実していて。ご飯が特に美味しかったですね。全部辛いんですけど、僕は辛いのが大好きなので、日本に帰ってきてもまだあの本格的なインド料理を探しています。

立花:
インドの大学を訪問できたのも印象的でしたね。インドの街を見ると、結構キレイで発展しているのですが、インフラなどは日本と比べるとまだ発展途上な感じもありました。でも、インドの学生が、日本の学生と変わらず、最先端のモジュールやAPIプラグインを使っているのをみて、ソフトウェアの強さを感じましたね。Wi-Fiさえつなげれば、街の設備に関わらず、世界最先端の知見にアクセスできる、というのを改めて実感しました。

UGIPを通して広がるキャリアの選択肢

UTmap編集部:
グローバルな人材の育成はUGIPの目的の一つですが、海外で働く、ということへの意識の変化などはありましたか?

立花:
そもそも海外で働く、みたいなイメージがさっぱりなかったので、実際にインドの会社を訪問して現地で働いている人を見て、海外で働くということの解像度は上がりましたね。キャリアの選択肢が広がったのを感じます。20代で海外に身を置けば、いろいろと経験できるんだろうな、と。

また、英語の重要性にも気付かされました。英語だけできてもダメだな、とは思っているのですが、英語ができる上で、自分の武器が何か一つあると、キャリアの選択肢が大幅に広がり、出来ることも増えるんだろうなと。そういう意味で、英語学習のモチベーションは上がりましたね。

タナチャイ:
僕は海外出身ですけど、東大にいると日本の文化、考え方に染まっている部分があります。今回のインド研修で、海外の文化、考え方に触れることで、世界の広さを改めて実感できたことが大きかったですね。具体的には、先ほど述べたメガベンチャーの開発拠点を訪ねたのですが、アメリカの時計、日本の時計、インドの時計と、三つ時計がかかっていたのが印象的でした。グローバルに働く、ということがどういうことか肌で感じられました。

立花:
研修に行ったメンバー間で親睦を深められたのも、大きな成果だったと思います。今でも定期的に皆でご飯に行くのですが、タナチャイさんと久しぶりに会ったら、スタートアップを立ち上げていて。インドパワーすごいなと思いましたね。

インドの人はハングリー

立花:
インド研修では、インドの学生のハングリー精神も感じましたね。例えば、自分たちがハッカソンに参加するときは、なるべくニッチな分野を選んで、新規性で勝負しようとするんですね。でも、インドの学生は全然そんなことを考えない。大規模言語モデルがあったら、それをニッチな分野に適用しようとするんじゃなくて、もっとすごい大規模言語モデルを作ろうとする、みたいな。インドの経済発展の裏にはこういう学生がいるんだろうな、と思って、そのハングリー精神は見習わなきゃいけないですね。

世界を見据えたキャリア設計を

UTmap編集部:
今回のプロジェクトで、キャリアの選択肢が広がったり、グローバルな視点を持つようになったとおっしゃっていましたが、これからのキャリアについてどのように考えていますか?

立花:
キャリアという視点だと、プログラムに参加して変化があったのは、先述したグローバルに働くことの解像度が上がった点に加えて、大規模言語モデルに興味を持ったところですね。

大規模言語モデルについて講義を受けたり、触ってみる中で、研究してみたいなという気持ちがわいてきました。それで、春休みにAISTという国立の研究所でインターンをしています。

タナチャイ:
僕はスタートアップを起業したのですが、起業自体はインドに行く前から考えていたことではありました。でも、インドでの経験を通じて、グローバルに展開することの重要さを痛感して、最初からグローバル展開を目指してやらなきゃいけないな、と思うようになりました。

やり抜くことが何より重要

タナチャイ:
やっぱり、チャレンジしてみることが大事だと思います。ずっと大学で勉強しているだけでなく、UGIPのような、新たなことが学べる機会に挑戦してほしいです。それと、一度始めたら最後までやり抜いてほしいですね。勉強会でリタイアしちゃう人も多く、残念に思います。

立花:
ハッカソンっていうと敷居が高いように感じますが、1カ月間、学習する機会もフィードバックの機会も与えられており、サポートも手厚いです。ちょっとプログラミングやってみたいな、くらいのモチベーションでも、参加してみればプログラミング知識だけじゃなく、交友関係も増えるので、是非積極的に参加してみてください。

ーーー

インド研修の様子は、立花さんのブログに詳細な記録が残されているので、興味のある方は是非ご覧ください。

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